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吹奏楽のチューニングは音程より「音色」?倍音とうなりの物理から考える効率的な合わせ方

理系視点で音
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タルンです!

みなさんは合奏でのチューニングをどのように行っていますか?

私の所属する団体では、ある程度音程を合わせるものの、「完璧に合わせること」自体を最終目標にはしていません。音程よりも音色や響きの方を重視しているのです。

今回は、なぜそのようにしているのか、物理的な理由と共にご紹介します。

高校の物理で習う「音の周波数のずれ」

音程がずれるとうなりという現象が起き、音が大きくなったり小さくなったりを繰り返します。音の高さが1Hzずれると、1秒周期でうねり(音の大小)が発生します。高校の物理で「10Hzと11Hzの波が重なると1Hzのうねりが発生する」と習った記憶がある方も多いのではないでしょうか。

もし全員がこのうねりをはっきりと感じ取れるなら、チューニングに苦労することはないはずです。 しかし、実際の合奏ではなかなか合わないですよね。それには次のような理由があります。

実験用に作成した音声データ

ピアノの真ん中のC(ド)の長2度下にあたる「B♭の音(約234.14Hz)」を使って比較してみましょう。違いをわかりやすくするため、2種類の音声データを用意しました。

  • パターンA : 1つの周波数のみで構成されるきれいな正弦波(単一音)
  • パターンB: ホルンの音を参考に、整数倍の周波数成分(倍音)を含めた音

実際に聴き比べてみると、パターンBの方が金管らしい音に感じられるのではないでしょうか。

パターンA

パターンB

波形を見ると、パターンAとパターンBで違いがあるのが見て取れます。ホルンの音(パターンB)は意外と尖った形をしています。

グラフの横軸は周波数、縦軸は波の大きさを示しています。 パターンAは234.14Hzのみの成分ですが、パターンBにはその2倍、3倍…と整数倍の周波数がバランスよく含まれています。この「整数倍の波の成分(倍音)」の違いこそが、音色の違いを生み出しているのです。

音程がずれるとどう聞こえるか?

では、音程が「5セント」ずれた場合どうなるかを考えてみましょう。基準となる234.14HzのB♭と、少し高くなった234.81Hzの音を同時に鳴らしてみます。

パターンA(正弦波)の場合

 振幅がゼロになる部分と最大になる部分がはっきりと現れ、誰が聴いても明確なうねりを感じることができます。

パターンB(倍音を含む音)の場合

聞こえるうねり周期はパターンAとほぼ同じですが、極端に音が小さくなる部分がなくなり、振幅が平均化されています。

なぜこのような差が出るかというと、基音のうねり(約0.68Hz差)に対して、2倍の周波数ではうねりも1.35Hz差になるなど、整数倍の音ごとに発生するうねりの周期が変わるからです。その結果、音全体の極端なうねりを感じにくくなります。

全体でのチューニングで意識すること

管楽器の音は基音だけでなく整数倍の音(倍音)を多く含むため、少しの音程のずれによる「うなり」を感じにくくできています。

そのため、私が合奏の前でチューニングをお願いするときは、チューナーの針を見て音程を合わせるのではなく、音色や響きを合わせることを意識してもらっています。

「音程を合わせなきゃ」と意識しすぎると萎縮してしまい、楽器本来の響きが失われてかえって音程を合わせるのが難しくなってしまいます。音色や響きが維持できていれば、音程が多少ずれていても聴き手にはほとんど気になりません。

特に限られた時間で練習する楽団の場合、チューニングの間に無理に音程だけを合わせようとしても、実際の演奏に入った段階でバランスが崩れてしまいがちです。まずは自分の楽器が一番よく鳴るポイントを探してもらい、その上で明確なうなりを感じる場合にのみ、管の長さを調整してもらうようにしています。

チューニングを行うタイミング

私の団は夜間に練習を行っており、仕事やプライベートの後に集まります。会場を設営してから音出しができる時間はわずか30分ほどです。

ウォーミングアップもそこそこにチューニングをしても、全く合いません。そのため、まずは音出し用の譜面を全員で吹いて楽器をしっかり鳴らす感覚を掴んでもらってから、チューニングを行うようにしています。

私の楽団では、秋山紀夫先生の「誰にでもできる合奏の基本トレーニング《新訂版》」の3番を使って音出しをし、1番を使ってチューニングをしています。

まとめ

音程が合っていないと気になり、ついついチューニングに時間をかけすぎてしまいがちです。しかし、せっかく楽しく吹きに来ているのに、そこばかりに時間を取られてしまうのはもったいないですよね。

「音程が合っていればもっと楽しくなる」と気楽に捉えてみてください。音程を無理に合わせに行くのではなく、音色や響きを合わせる意識を持つことで、演奏全体の深みも増していきます。ぜひ次回の練習で試してみてください!

作成中のWebアプリのご紹介

和音の響きや、チューニングによる音のずれをブラウザ上で体験できるWebアプリを作成しています(インストール不要ですぐにお使いいただけます)。

今回の記事でご紹介した「音程のずれ」についても、パターンA(正弦波)とパターンB(倍音を含む音)での聴こえ方の違いを実際に試して体感していただけます。ぜひ活用してみてください!

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